The Adventure of the Sussex Vampire Part Two 「サセックスの吸血鬼 第二話」日本語訳

NHKのラジオ番組「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ(Enjoy Simple English)」では、簡単な英語でいろんなストーリーを楽しむことができます。

この番組には、日本語訳(和訳)が付いていません。「英語で聴きなはれ」というわけです。

でも「日本語訳がほしい」と思う方もいらっしゃいますね。そんな方へ向けて、私の拙訳を公開します。逐語訳ではありません。内容をつかむための参考になさってください。

今回は、かのコナン・ドイル原作 ‘The Adventure of the Sussex Vampire’ (サセックスの吸血鬼)の第二話です。では、どうぞ。

サセックスの吸血鬼 第二話

ホームズと僕は、ロバート・ファーガソンの家に来ていた。なぜかと言うと、ファーガソン夫人が吸血鬼なのかどうかを突きとめるためだ。

ファーガソンと会話を済ませた後、ホームズはメッセージをひとつ、夫人へと送った。すると、どういうわけだろうか、夫人の叫び声が聞こえてきた。それでも、夫人はわれわれと会うことを承諾してくれた。

ファーガソンとホームズと僕が夫人の部屋へ入ると、ホームズは話し始めた。

「大丈夫ですよ。私は、何が起きたのかわかっています。

はじめに、あなたが吸血鬼だなんてことはあり得ないと思いました。でも、ファーガソン君と保育士さんは、あなたが唇を血で赤く染めて赤ん坊から離れていく姿を確かに見ています。

その通りですね。奥さん?」

「はい。その通りです」

「ファーガソン君。何か別の理由は考えられないかね。どうして君の奥さんが赤ん坊の血を吸っていたのか。たとえば、もし誰かの体から毒を取り除こうとしたら、ひとつの方法は、口で毒を吸い出してしまうことだ」

「毒だって?!」

「そう。下の階の壁には、たくさんの武器がかかっていたね。鳥を狩るために使う小さな弓があって、その隣には弓矢のケースが置いてあった。そして、それは空っぽだった。

弓矢は普通、毒を塗って使うものだ。だから、もし子どもが弓矢によって怪我を負ったら、毒がまわって死んでしまうだろう。生きるには、すぐにその毒を取り除くしかない。

それと、あの犬は実験台に使われたんだ。毒がうまく効くかどうか、のテストにね。

さあ、これでわかっただろう? 君の赤ん坊は、毒矢で怪我を負ったんだ。そして、君の奥さんは赤ん坊の命を救った。毒を吸い出すことによって、ね。

でも、奥さんはそのことを君に言わなかった。なぜ言わなかったか、それは君の心を傷つけたくなかったからだ」

「僕の心を傷つけるだって?」

「そう。息子のジャック君のことを君がどれほど愛しているか、奥さんはわかっているからね」

「ジャックがやったのか?!」

「残念ながら、そういうことだ。

ジャック君は、赤ん坊の弟にとても嫉妬していた。赤ん坊は、ジャック君とは違って背中に障害を負っていたりしないし・・・・・・だからジャック君は、君の愛を赤ん坊に奪われると考えたんだよ、ファーガソン。

君が赤ん坊を抱っこしている間、ジャック君はとても不機嫌そうに見えた。僕は窓を鏡の代わりにして、ジャック君の表情をうかがっていたんだ」

「信じられない!」

「それと、君の奥さんがどうしてジャック君をひっぱたいたのか、も理解できる。どんな母親だって、もし自分の赤ん坊に毒を盛られたなら、激しく怒るにちがいない。

奥さん。私の言うこと、合っていますか?」

ファーガソン夫人は泣いていた。夫人はファーガソンに言った。

「あなたには言えなかった。なぜって、あなたがとても傷つくだろうとわかっていたから。

私、持っていたの。誰かがこのことをあなたに言ってくれるのを。

それでホームズさんが「私は、すべてわかっています」というメッセージを私に書いてよこしてくれたとき、とてもうれしかった。それで、思わず叫び声が漏れてしまったの」

「ホームズ君、われわれはどうしたらいいんだ?!」

「ジャック君には、一年間、船上生活をさせるのがいいと思う」

ファーガソンは、ベッドの側に立ったまま、泣いた。そして、震える手を自身の夫人に差し出した。

「よし、ワトソン。われわれはおいとまする時だ。ファーガソン夫妻は、これからのことについて有意義な話し合いをするだろうよ」

こうして、ホームズと僕は部屋を出ると、ドアを閉めたのだった。

( 「サセックスの吸血鬼」終)