NHKのラジオ番組「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ(Enjoy Simple English)」では、簡単な英語でいろんなストーリーを楽しむことができます。
人生を毎日少しずつ豊かにしてくれる、私にとって大切なラジオ番組です。監修のDaniel Stewartさん、この番組はぜひ末永く続けていってください!
さて「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は「英語でストーリーを楽しむ」のが趣旨なので、日本語訳(和訳)は付いていません。
「いいから英語で聴きなはれ」というわけです。
でも「日本語訳がほしい」と思う方もいらっしゃいますね。そんな方へ向けて、私の拙訳を公開します。逐語訳ではありません。内容をつかむための参考になさってください。
今回は、かのコナン・ドイル原作 ‘The Adventure of the Speckled Band’ (斑の紐 = まだらのひも)の第一話です。
小学校の図書館でドキドキしながら読んだ(もちろんそのときは日本語で)ことを覚えています。あの本、挿絵が怖かったなあ。天井から長~いナニカがぶら下がって・・・・・・では、どうぞ。
まだらのひも 第一話 日本語訳
ある日の早朝、ホームズと私ワトソンは、一人の若い女性と向かい会っていた。
「おはようございます。私の名前はシャーロック・ホームズ。そして、こちらは私の友人のドクター・ワトソンです。おや、なんだか寒そうですね」
ホームズがそう言うと、その女性は答えた。
「私は寒さで震えているのではありません。怖いんです。どうか助けてください、ホームズさん」
ホームズは彼女をじっと見て言った。
「怖がることはありません。今朝あなたは電車から馬車に乗り継いでここまで来ましたね。私はあなたのお力になれることをとっても嬉しく思っていますよ」
その女性は「その通りです。でも、どうしてそれがわかったんですか?!」と、とても驚いた様子を見せた。
「何も不思議なことではありません。あなたの左手には帰りの乗車券があるじゃありませんか。そして、あなたのジャケットの左側には泥の跡が付いています。そんな跡がつくのは馬車に乗ったときだけですよ。さあ、すべてを話してください」
「私の名前はヘレン・ストーナーです。継父のドクター・ロイロットと暮らしています。母は8年前に亡くなりました。でも母はたくさんのお金を残していってくれました。そのお金はすべて継父の管理下にあります。私の双子の姉と私が結婚するまでは」
ホームズは椅子に座ったまま目を閉じて聴いていた。
「母が死んだ後、継父は人が変わってしまいました。とても暴力的になって、今は一日中、自分の部屋にこもっていることがしょっちゅうです。継父はインドから連れてきた動物たちを可愛がっています。ヒヒ(baboon)とチーターをペットとして飼っているんです。そして、私の姉は2年前に亡くなりました」
ホームズは目を開けて尋ねた。
「どのようにして亡くなったのですか」
「それは姉が結婚する2週間前のことでした。わが家には家族それぞれのために寝室が3つあります。部屋と部屋はどれも直接はつながっていません。それぞれの部屋に入るためには、廊下を通ってドアから入るか、または窓から入るしかありません。
その夜、姉は私の部屋にやってきました。そのとき継父は自室にいたのですが、姉が言うには、継父の部屋から自分の部屋にタバコの匂いが流れてくると言うのです。姉は深夜12時に誰かが笛を吹くのを聞いたことはないかと私に聞いてきました。なんとも変な質問です。私は聞いたことがないと答えました」
「部屋のドアは、毎晩鍵をかけますか」
「はい、いつも。姉が自室に戻って、その日の深夜12時になったとき、姉の叫び声が聞こえてきたんです。私は姉の部屋に駆け込みました。そして死の間際にある姉を発見したんです。私は覚えています、そのとき笛の音が聞こえたことを。それから姉の最後の言葉も覚えています。姉は叫んだんです。
「ひも。まだらのひも!」と。
姉がなぜ死んだのか、お医者様でもわかりませんでした」
「興味深い」。ホームズはそう言った。
「私はもうすぐ結婚します。そんな折、 2日前の晩、継父が無理矢理、私に部屋を移れと言ってきたんです。それで今、私は亡くなった姉の部屋で寝ているんですが・・・昨夜、あの笛の音が聞こえてきたんです! 怖いんです、私、死ぬんじゃないかって」
「わかりました。今日のちほど、ワトソンと僕があなたの家にうかがいます。また午後にお会いしましょう」
(「まだらのひも 第二話」に続きます)